4.西九州編
博多駅に着いた私は、周遊きっぷの2枚目を自動改札に通しホームに上がった。「ドリームつばめ」が発車する7番ホームは、福北ゆたか線の電車と共用である。走り出して2週間も経っていない817系電車は、黒一色の前面と銀色の側面が印象的である。車内はキハ67→キハ200を引き継いだ転換クロスシートで、補助椅子が付いているにも関わらず、円状に並んだドア付近のつり革に立ち客がつかまる。中洲があるせいか夜の利用者も多い。
ドリームつばめ | 91M | 博多 |
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西鹿児島 |
モハ787-9 | 0:06 | 5:54 |
「ドリームつばめ」は入線直後は自分1人で1両独占状態だったが、日付が変わった頃には乗車率60%ほどになった。そして、久留米行最終普通列車が発車した4分あと、博多駅を発車した。「ドリームつばめ」は93年春の改正で急行「かいもん」から格上げ置換えされた列車で、94年に九州を制覇した時は4泊もお世話になった。「かいもん」の置換えだから北九州方面から走らせてもいいと思うが、寝過ごすと大変なことになりそうである。しかし、商売敵であるバスの最終が23時前だということを考えると現状でいいかもしれない。
「ドリームつばめ」は鳥栖までは時速120キロで飛ばすが、鳥栖以南では時速110キロ運転となる。そのため大牟田までの所要時間は快速と変わらないが、787系のアコモデーションを考えると4枚きっぷやエクセルパスで充分元が取れる。大牟田でほとんどの客が降りたあと、車内におやすみ放送がかかり減光した。そして私は眠りについた。
私が目を覚ましたのは伊集院発車直後である。やはりシートピッチ100cmは寝心地がよい。時間は5時半過ぎだが外は暗い。「ドリームつばめ」は定刻通りに西鹿児島に到着した。到着時点では1両に5人しか乗ってなかった。
西鹿児島は九州新幹線の開業準備で、駅舎は改築されていた。橋上駅舎なのだが、新幹線のコンコースを兼ねている細長い形状で、在来線ホームと十字状に重なっている。駅前広場に出たが、朝早いためか店も開いておらず市電も走っていない・コンコースのお土産屋は朝6時に開店していたが、買い物は明日することにした。北口からつばめガールが出勤してきた。朝早くから大変である。駅の売店で名物の「しろくまアイス」を購入しようとしたが、寒いし東京で売ってるものと同じなため購入しなかった。
つばめ2号 | 2M | 西鹿児島 |
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八代 |
モハ787-17 | 6:25 | 8:33 |
西鹿児島からは「ドリームつばめ」で来た道を博多行の「つばめ」で戻る。早朝の「つばめ」の乗車率は西鹿児島発車時点で30%ほどだった。この時間になると外も明るくなってくる。川内ではまとまった乗車があり、485系「さわやかライナー」と交換する。九州新幹線の工事は順調に進んでおり、川内の北の部分では高架橋梁が姿を現わしている。水俣でもまとまった乗車があり、乗車率は70%ほどになる。そして「つばめ」は八代で満席になった。
くまがわ1号 | 1101D | 八代 |
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坂本 |
キハ65-56 | 8:49 | 9:00 |
「くまがわ」は熊本と人吉を結ぶJR九州唯一の急行である。去年の3月までは宮崎まで「えびの」が走ってたが、宮崎―人吉間が廃止された上、「くまがわ」に吸収された。熊本―人吉間で鹿児島、宮崎方面の高速バスと競合してるが、「くまがわ」は10分程速い上に値段も3/4程である。(2枚きっぷの場合)
「くまがわ」は「つばめ」の続行にも関わらす八代でまとまった下車があった。2枚きっぷの設定がないためか100円節約したのだろうか。乗客は2両あわせて10人弱だった。球磨川に沿いながら、鹿児島本線、九州新幹線をくぐり、10分ほどで坂本に到着した。坂本駅は構内踏切で結ばれた対向式ホームである。上りホームと下りホームは千鳥状に配置されており、構内踏切は常に列車の先頭部分にある。坂本駅は鹿児島線が人吉まで開業した当初からの駅である。当時鹿児島までのメインルートは、水俣、出水経由ではなく、人吉、吉松経由であった。
くまがわ4号 | 1104D | 坂本 |
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八代 |
キハ65-53 | 9:20 | 9:32 |
坂本からは「くまがわ」で八代に戻る。乗客は20人ほどである。「くまがわ」は熊本まで行くが、八代で「つばめ」に道を譲るため、7分停車する。八代では降りて「つばめ」に乗り継ぐ客より、「くまがわ」を乗り通す客が多かった。なお、2枚きっぷでは「くまがわ」と「つばめ」の乗り継ぎが可能で、熊本駅が市中心部から離れている分のハンデを埋めている。
つばめ4号 | 4M | 八代 |
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久留米 |
サハ787-1 | 9:37 | 10:48 |
「つばめ」の自由席は熊本だと満席だと予想したため、ビュッフエに行って朝食を取ることにした。頼んだのはピリ辛ビーフンとリンゴパイだった。利用客は私以外で一人という状態で不安に感じたが、売店基地やインフォメーションセンターを兼ねていることを考えると、それほど心配する必要は無さそうである。熊本に到着する前に自由席で席を確保、熊本では30%ほどの客が入れ替わった。久留米ではクジャクが出迎えてくれた。
ゆふいんの森3号 | 7003D | 久留米 |
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豊後森 |
キハ70-71 | 11:03 | 12:11 |
久留米からは全車指定のリゾート特急「ゆふいんの森」で内陸部に移動する。「ゆふいんの森」は89年春改正のデビューで、「スーパーひたち」「ワイドビューひだ」と同期である。トレインピックが始まった今年の春は先頭車が自由席だったが、7月から再び全車指定席に戻った。GWの混雑がひどかったのだろうか。平日にも関わらず乗車率は100%だった。早目に指定席を確保したのは良かった。ミニギャラリーの木製ベンチで荷物をまとめてから指定された席に移動する。
列車の車内にはBGMが流れ、ゆふいんレディがシートサービスで座席に軽料理を持ってくる。さながら走るファミリーレストランである。日田は久大本線随一の都市だが乗降は少なかった。ここで鮎寿司を積み込み、シートサービスで販売される。天ヶ瀬の先では落差30メートルの慈恩の滝の見物のため徐行する。観光ポイントの徐行というと、スーパー宗谷の利尻富士を思い出す。スジとか余裕時間が気になるのは、哀しい性である。
豊後森の降車客も少なく、90%以上が由布院に向かった。豊後森は玖珠町の中心で、昔は肥後小国に向かう宮原線が乗り入れていた。(実際は隣駅の恵良から分岐)しかし、宮原線は年に廃止になり、現在は大分交通のバスが4往復走るのみである。玖珠町は日本のアンデルセン、久留島武彦を生み出した所で、駅前には大きい桃太郎像がそびえていた。(岡山駅のような石像ではない)
ゆふいんの森2号 | 7002D | 豊後森 |
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鳥栖 |
キハ72-1 | 12:43 | 14:10 |
豊後森からは新「ゆふいんの森」で来た道を戻る。新「ゆふいんの森」は99年春改正のデビューである。「ゆふいんの森」が急行形からの改造に対し、新「ゆふいんの森」は新造車である。外見はほぼ似ているが性能は違う。「ゆふいんの森」が博多−由布院−別府で1往復するのに対し、新「ゆふいんの森」は博多−由布院間を2往復する。先ほどの「ゆふいんの森」の利用率からすると、博多−由布院間の強化は正解である。なお、由布院では別府系統の「ゆふ」に接続する。
新「ゆふいんの森」は内装も「ゆふいんの森」と違っていた。連結器部分もハイデッカーで、ドア付近はステップではなく階段になっている。平日昼間の由布院からの特急にも関わらず、ほぼ満席だった。日田までは隣が高校生だったが、リゾート特急は通学輸送も担ってるのだろうか。乗車の記念として「ゆふいんの森キャンデー」を購入しておく。(何故かコーヒー味)久留米と鳥栖で客の50%が降車した。
ハウステンボス15号 | 4015M | 鳥栖 |
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早岐 |
クハ783-108 | 14:45 | 15:52 |
鳥栖からは「ハウステンボス」で西に向かう。「ハウステンボス」の乗車率は90%ほどだが、半数は佐賀で降車、武雄温泉や有田でもまとまった降車があり、ハウステンボスに向かったのは1車両数名だけだった。早岐で後ろに連結していた「みどり」に移動する。
みどり15号 | 4015M | 早岐 |
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佐世保 |
モハ783-108 | 15:54 | 16:05 |
「みどり」は乗車時間10分足らずのため、車掌室に乗車証明を受けに行く。グリーン車を経由するときは少し気まずかった。早岐で列車の方向が変わったため、席のほとんどが逆向きである。乗車率は40%ほどだった。佐世保駅は高架化工事の最中だが、「みどり」は高架に上がらず地平ホームに到着した。
佐世保駅に来たのは去年の春改正以来である。高架化工事は結構進んでおり、昼間時のシーサイドライナー、シーボルト、一部普通電車は、高架ホーム4、5番線から発車する。地平ホームである1、2番線では「みどり」が2本並び、上野駅のような雰囲気である。1番線に接する駅舎にはコンビニ(生活列車)、パン屋、ゲームセンターが同居しているが、高架化完成後には高架下に移動するのだろうか。MDの電池が無くなってきたので、コンビニで電池を買う。
シーボルト3号 | 7053D | 佐世保 |
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長崎 |
キハ183-1002 | 16:37 | 18:03 |
「シーボルト」に乗るために高架ホームへ向かう。地平ホームの頭端部が仮設通路につながっており、そこからエスカレーターで上がる。テント状の屋根の下には、オランダ国旗と同じ色に塗られた展望室付き気動車が停車していた。この車両は「ゆふいんの森」より1年早い88年のデビューで、「オランダ村特急」として小倉−佐世保間を結んだ。電車との協調運転も可能で、翌年からは門司港−博多間で485系「有明」と併結して運転された。92年にハウステンボスが開園すると、この車両は「ゆふいんの森」として使用されることになった。しかし、99年の新「ゆふいんの森」の投入で再び佐世保の地に戻ることになった。
展望室は去年の春に乗ったので、今回は中間車に乗ることにした。中間車でも室内のテレビを通して前面展望を楽しむことができる。ハウステンボス駅で817系と交換する。817系は福北ゆたか線だけではなく、長崎本線、佐世保線にも投入されたのである。先ほど鳥栖駅でも目撃した。ハウステンボス駅で目撃した817系は、「みどり」に接続して平日のみ運転される「ハウステンボスリレー」である。なお、長崎地区の817系は福北ゆたか線のものと外装が少し違う。
日が沈んでいく大村湾を眺めながら南下する。乗車率は30%ほどで、全区間通して変わらなかった。諫早を過ぎて新線区間に入る頃にはすでに真っ暗で、テレビに映る前面展望はほとんど意味が無かった。
長崎駅の改良工事はほとんど完成しており、改札口の前の広場はドーム状の屋根で覆ってあった。完成したてのお土産屋で角煮マン、ちゃんぽんせんべい、皿うどんを購入し、発送する。角煮マンはお土産で発送するものの他、出来たての温かいものを一つ購入した。本場の皿うどんも食べたがったが、時間がないので駅弁「長崎街道」で我慢する。
かもめ38号 | 2038M | 長崎 |
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佐賀 |
モハ885-4 | 18:30 | 19:47 |
お土産を買って発車ギリギリにホームに向かったら、「かもめ」は既に満員でデッキまで人が溢れていた。改札口から一番遠い最前部までそのような状況だった。考えてみれば夕ラッシュのピークだった。しかし諫早で大量に降りるのは実証済みなので、次の「かもめ」を待たずにこの「かもめ」に乗ることにした。
「かもめ」は浦上でさらに人を乗せる。浦上から乗る人は立席覚悟なのだろう。浦上を出ると「かもめ」は加速して長大トンネルに入る。長崎本線の現川ルートはトンネルが連続する高規格の新線で、「かもめ」は最高速度の130キロを連続して出す。その間に車掌が検札しに来る。案の定、ほとんどが諫早までの4枚きっぷなどでほっとする。
諫早に到着すると今まで乗車率130%だったのが、なんと50%まで下がった。乗客の60%が降りたのである。諫早では長崎を24分前に発車した「シーサイドライナー」に接続する。他の「かもめ」は「シーサイドライナー」との接続は悪いが、この「かもめ」は帰宅客の便宜を図ってうまく接続している。他の時間帯もうまく接続すれば、長崎−佐世保は無理でも、浦上−佐世保はバスからシェアを持っていけると思うのだが。なお、長崎−諫早間では運賃450円に対し、4枚きっぷの単価は700円である。所要時間は「シーサイドライナー」23分、「かもめ」17分である。
諫早からは先ほどまでの走りとうって変わって、海岸線沿いの小カーブをゆっくりと走る。最先端の振り子制御を使ったとしてもかなり遅い。しかも単線のため小駅や信号所で交換待ちをする。これでは高速バスにシェアを持っていかれる。交換する「かもめ」が博多口の夕ラッシュで遅れたため、こちらも数分の遅れが出てしまう。肥前鹿島到着は4分延である。肥前山口からは再びフルスピードで走り出し、佐賀到着は3分延だった。
かもめ42号 | 2042M | 佐賀 |
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博多 |
モハ885-2 | 20:45 | 21:19 |
佐賀ではJR九州直営の銭湯「極楽湯」で一汗流す。「極楽湯」は車内から見え、駅からそう離れていない様に見えたが、実際は10分以上も歩いた。それでも、電話帳を調べる必要が無く、しかも電車から見えるスーパー銭湯はありがたい。
この時間になると「かもめ」の乗車率は50%に満たない。博多到着前にはJR九州社歌「浪漫鉄道」が流れたが、去年の春に乗ったときに比べ、音量は小さかった。「鉄道唱歌」のチャイムは今回はなかった。
きらめき6号 | 74M | 博多 |
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戸畑 |
モハ885-1 | 21:40 | 22:25 |
「きらめき」は去年の春、博多−門司港間の「にちりん102号」「つばめ102号」の代わりに登場した通勤特急である。今年の春の改正では「ホームライナー」「さわやかライナー」も「きらめき」に吸収された。これは実質上値上げで「きらめき」に並ぶ列からも不満の声が聞こえた。しかし、2枚きっぷ、4枚きっぷは運賃と変わらないので関係ない。折尾までの運賃にライナー料金をプラスしても4枚きっぷの単価と変わらない。また、「きらめき」は前身の列車がバラバラのため、車両も「つばめ型」「かもめ型」「ハイパーサルーン型」とバラバラなのも特徴である。
私が並んだ時は発車まで20分近くあったので列はなく、発車10分前でも5人ほどしか並んでなかった。駅員がその列に対して、500円の特急券を手売りで売りさばいていく。博多から北九州市内各駅までの特急料金は距離に関係なく500円である。
「きらめき」の乗車率はほぼ100%だった。中洲のことを考えると、日付が変わった頃に発車する「きらめき70号」の方が乗車率が高そうである。博多を出ると赤間まで停まらないので検札が来るが、ここでパスポートの「有明」のところにスタンパーを押されるというハプニングが。「きらめき」ということを確認して、スタンパーを正しい位置に押してもらう。北九州市内に入り折尾に到着すると客の70%が降りた。折尾で快速と緩急結合するが、「きらめき」との停車駅の違いは八幡と小森江ぐらいである。特急停車駅にしては珍しい築堤島式ホームの戸畑で降りる。
ソニック56号 | 3056M | 戸畑 |
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博多 |
サハ883-2 | 22:34 | 23:17 |
戸畑から乗る「ソニック」は95年デビューの青い「ソニック」で、トレインピックでは白い「ソニック」と別のものとして扱われる。7年前九州を乗りつぶしに行った時、たまたまあった「ソニック」のお披露目に夢中になり、筑豊電鉄と西鉄北九州線、北九州都市モノレールの乗りつぶしが出来なかったことを覚えてる。
「ソニック」の最終ということで空いており、派手なイヤーがついたシートに座る。「ソニック」は筑豊電鉄のリベンジ以来2度目の乗車で、日豊本線内では乗ったことはない。大分方面からの客は折尾で結構降り、赤間でもまとまった降車があった。