■新幹線と新型路面電車編■

2004.03.26



鹿児島市交通局 天文館通 >>> 鹿児島駅前
1013B 6:20 6:27

鹿児島市交通局 鹿児島駅前 >>> 鹿児島中央駅前
1013B 6:34 6:48

 鹿児島に来た目的は新幹線だけではない。3年前、鹿児島の路面電車に導入された低床式電車「ユートラム」に乗るためである。新幹線とユートラム、一緒に乗ることはユートラムのデビュー時に決めていた。当然、旅行のスケジュールは鹿児島交通局のHPでユートラムの運用を見ながら組み、出庫が遅い休日は避けることにした。

 天文館通停留所は大通りの真ん中にあり、信号を渡る構造である。よってユートラムが近づくタイミングを見計らって、信号を渡らなければならない。しかも早朝で乗客が誰もいないため、停留所で待っているときにユートラム以外が来ると、その電車は無駄に停車することになってしまう。

 ともあれ、天文館通からユートラムに乗車。乗客は自分1人で、途中停留所からの乗り込みもなかった。鹿児島駅前までノンストップと言いたいところだが、当然信号待ちがあった。ユートラムは連接車体だが、ハートラムやMOMOと違う連接車体である。ハートラムやMOMOは客室が3つに分断されているのに対し、ユートラムは運転室−客室−運転室と分断されているのである。よって、車内はMOMOというよりむしろ伊予電の低床式路面に近い。

 鹿児島駅前に着くと方向幕は「中央駅前経由 郡元」に変わる。JRが西鹿児島から鹿児島中央と改称したのに合わせて、鹿児島市交も西鹿児島駅前から鹿児島中央駅前と改称となったが、ユートラムやJR817系の方向幕はLEDのため、在来車に比べ幕交換は楽である。

鹿児島市交ユートラム(鹿児島駅前) 鹿児島中央駅西口

つばめ34号 34E 鹿児島中央 >>> 川内
822-102 7:19 7:32

 いよいよこの旅のメイン、九州新幹線乗車となる。

 東口の屋外階段を上がり、自由通路から西口に抜ける。西口はタクシーターミナルとして整備された。路面電車やバスが乗り入れる東口に比べ、裏口感を否定できない西口だが、デザインは西口の方が新幹線駅らしい。東口のデザインは博覧会のパビリオンの様な印象を受けるが、右に駅ビルが完成すれば印象が変わるだろう。新幹線ホームは3階にあり、在来線と十字交差している。2面4線構造だが、2本以上の列車が同時に在線することはほとんどなく、4つの線路を交互発着して使う。

発車を待つつばめ(鹿児島中央) つばめ車内

 つばめ34号は4割ほどの乗車率で鹿児島中央駅を発車した。発車すると間もなく、日英韓中の4ヶ国語自動放送がかかる。自動放送の長さは4分近くに及び、その間に新幹線は16キロも進んでいる。案内終了後5分も経たないうちに川内到着。洗面所に垂れ下がった、八代産のい草縄暖簾(のれん)を確認してホームに降りた。川内で降りた人数は8人ほどだった。

川内駅に入線するつばめ103号 川内駅西口

 川内の新幹線ホームは他の駅とは違う地平構造で、駅舎は在来線共有の橋上式である。在来線駅のある海側が表玄関の西口で、大きい駅舎には物産販売店「きやんせふるさと館」が入っている。一方、元々駅舎がなかった東口は整備されているものの、バス、タクシーは乗り入れておらず、駐輪場があるのみだった。在来線駅は、旧駅舎に接する海側ホームが未使用になり、島式ホームをおれんじ鉄道とJRが分けて使うようになった。2番線は本線も兼ねているため、肥薩おれんじ鉄道とJRの線路はつながっているが、1番線は車止で分断されていた。

つばめ36号 36E 川内 >>> 新八代
822-104 7:51 8:24

 川内からのつばめは先行との差が19分しかなかったため、乗客は先頭車で4人ほどしかいなかった。出水を過ぎると海が見えるようになるが、一瞬である。それでも予想していたよりは見えた印象を受けた。水俣市内を一望しながら、新水俣に到着。新水俣を発車すると、再び山奥に入りトンネル部分が多くなる。球磨川沿いに曲がって走る肥薩線の線路を望んで、トンネルを抜けたら新八代に到着する。在来線の先の留置線には787系4連(有明用)が停車していた。

つばめとリレーつばめの接続 新八代から在来線に向かうリレーつばめ

 リレーつばめを見送った後、昨日は通らなかった新八代の東口に出る。新設駅のため駅前には何もないが、タクシーや人吉産交への高速バスが整備されたロータリーに乗り入れる。八代の中心部へ向かう路線バスも出ているが、西口からのバスの方が早くて本数が多い。但し、西口は在来線の橋上駅を経由しないと出れない。

新八代駅東口 新八代西口

つばめ1号 1E 新八代 >>> 鹿児島中央
826-104 8:46(44) 9:19(18)

 新八代からはつばめ1号で折り返す。つばめ1号は鹿児島中央までノンストップの便なので、「新水俣、出水、川内は通過する」との放送がかかった。始発駅と終着駅しか停車しない列車に乗ったのは、6年前に乗ったあさま3号以来である。44分の発車だが、発車間近になってもリレーつばめ1号は現れない。8時44分、定刻より3分遅れでリレーつばめ到着、新八代発は2分遅れとなった。鹿児島中央限定のためか利用率は低く、自由席で3割ほどだった。在来線とまたがる「つばめ2枚きっぷ」は指定席用のみの設定だから、指定席の方が乗客が多いだろう。

3月26日つばめ1号運転時刻
新八代発 8:46 00 駅間平均速度
新水俣通過 8:57 25 221.1Km/h
出水通過 9:01 15 250.7Km/h
川内通過 9:09 15 245.3Km/h
鹿児島中央着 9:19 40 203.2Km/h

 全区間での走行時間は33分40秒、表定速度は224.7km/h。遅延したものの、34分の走行時間だから余裕時間は少ない。車掌が検札に来たので、慌てて切符を財布から出す。885系のようなチケットホルダーがあれば便利なんだけど、検札が少ないせいか800系には付かなかった。つばめ1号は1分遅れで到着、コンコースでつばめグッズを買って、在来線ホームへ急ぐ。

はやとの風2号 7022D 鹿児島中央 >>> 吉松
キハ140-2069 9:27 10:50

 黒い車体のはやとの風は5番線ホームに停車していた。発車直前に車内に入ったところ、自由席はフリースペースしか空いてなかった。団体が自由席を占めていたのである。仕方がないので木製ベンチに座って、木製テーブルに荷物を置いた。背後の展望スペースからは桜島がくっきり見えて、観光テープも流れる。はやとの風の車両は改造を受けたとはいえ、もとが近郊気動車のためデッキは付いてない。また、鹿児島中央寄りの指定席車両の扉は両開きのため、少し違和感がある。利用率を見て、ゆふいんの森のような新車を投入するか、快速に格下げするか決めるのであろう。

 隼人では10人ほどが降りた。特急王国に隼人の時刻表を掲載したのは正解かもしれない。木製テーブルを独占したところで、九州新幹線開業記念特製弁当を朝食として食べる。特製弁当は薩摩揚げ、サツマイモ、黒豚煮と鹿児島名物のおかずが充実していた。途中、伝統ある駅舎の嘉例川に停車するが、列車の中からでは木造駅舎の裏しか確認できなかった。肥薩線内の乗降は少なく、ほとんどが吉松まで乗りとおした。

国鉄型気動車改造のはやとの風 吉松で折り返すいさぶろう

しんぺい102号 8244D 吉松 >>> 人吉
キハ140-2125 11:37 12:51

 吉松駅は2面4線構造で、吉都線・隼人方面は1・2番線、人吉方面は全て3番線発となっており、4番線は使われてない。鹿児島本線の昔のターミナルだったせいか駅構内は広く、北側の空き地には蒸気機関車が展示されていた。11時23分、いさぶろう101号の客が乗り終わったのと同時に、フリースペース争奪戦となる。単行のため通路までいっぱいになると思ったが、立席は10人ほどだった。

 吉松駅を発車したしんぺいは、山を登りながら宮崎県に入り真幸(まさき)駅に到着する。真幸駅には鳴らすと幸せになるという幸せの鐘があった。しんぺいは観光列車のため、各駅停車時間は多めにとってある。真幸駅も5分の停車時間があり、5分間ずっと鐘が鳴っていた。列車は真幸駅を逆方向に発車して坂を登ると一旦停止。「お邪魔します」という微笑ましい車内放送の後、ノッチを持った運転士が車内を通り抜け、また逆方向に発車した。つまり、スイッチバックで進行方向は真幸到着前と同じとなったのである。

スイッチバックから真幸駅を見下ろす えびの盆地と霧島連山

 トンネルをいくつか抜けると、目の前に素晴らしい光景が広がった。えびの盆地が下の方に広がっており、霧島連山がその後ろに連なっているのである。この眺めは日本三大車窓に数えられている。そして後藤新平鉄道院総裁の「引重致遠(いんじゅうちえん)」が掲げられた矢岳第1トンネルに入る。矢岳第1トンネルは全長2096メートルである。共用当初は笹子、冠着、小仏といった甲斐路関係のトンネルに次いで4番目の長さを誇っていた。首都圏では横須賀トンネルがその長さに近い。

矢岳駅駅舎 ループ線から見た大畑駅スイッチバック

 山懸伊三郎通信大臣の「天険若夷(てんけんじゃくい)」が掲げられたトンネルを抜けると、宮崎県から熊本県に入り、矢岳駅に到着する。標高537メートルにある矢岳駅は唯一の棒線構造で、過去には矢岳だけ通過する急行があった。風情ある駅舎の吉松寄りには、SL展示館があり中にはD51 170があった。ここも停車時間は5分ほどだった。 

大畑駅駅舎 大畑駅の桜としんぺい

 山を降りていると下の方に線路と駅が見えてきた。これから着く大畑(おこば)駅である。列車は大畑駅でスイッチバックすると、今走っている線路をトンネルでくぐるのである。真幸駅同様、直接大畑駅には入らず、駅の上で向きを変えてから大畑駅に入った。大畑の駅舎も風情があり、桜が駅構内を囲んでいた。大畑駅で向きを変えたしんぺいは、下り坂を勢いよく降りた。九州道が並行し、球磨川橋梁を渡ると人吉に到着する。

 人吉駅は3面5線構造で、駅前にはからくり時計がある。駅舎に接する1番線は八代方面が発着、吉松方面は2番線発着となり、吉松同様跨線橋を使った乗り換えとなる。しんぺいで観光する団体旅行のメインが高齢者であることを考えると、構内踏切の方がいいかもしれない。または松山でやっているような同一ホーム上並行停車である。

 九州新幹線が全通して今以上に観光客が来れば、九州横断特急しんぺいはやとの風なのはなDXを1本化した別府−指宿間の直通列車を設定して欲しいところである。水戸岡ブランドのリゾート列車で、乗り換えせずに阿蘇連山、3回のスイッチバック、霧島連山を楽しめる列車は受けるかもしれない。

人吉駅舎とからくり時計 九州横断特急は人吉で折り返す

九州横断特急6号 1076D 人吉 >>> 新八代
キハ185-7 13:05 14:12

 九州横断特急は、今回の改正で特急あそ急行くまがわを吸収して誕生した列車で、別府−阿蘇−熊本−人吉を結ぶ。国鉄時代は豊肥本線と肥薩線を直通する列車はなく、肥薩線急行は博多方面へ、豊肥本線急行は三角方面へ直通していた。今までにない直通運転で、人吉−阿蘇といった観光需要だけではなく、人吉−新水前寺といったビジネス需要にも応えることができた。

 九州横断特急6号は駅案内は2両だったが、停車していたのは熊本寄にゆふ編成1両連結した3両だった。キハ185の購入は賛否両論あるが、他の特急車両と違って細かい車両運用ができるのは大きい。乗車率は1号車自由席3割、2号車自由席5割、3号車指定席5割で、3両編成は正解である。列車は球磨川沿いを下りていく。途中、渡、一勝地などに停車するが、乗降はなかった。坂本で人吉行くまがわ3号と交換する。新幹線と肥薩おれんじ鉄道をくぐると八代である。

リレーつばめ12号 7012M 新八代 >>> 鳥栖
サハ787-4 14:31 15:46

 新八代駅西口の様子を見た後、在来線の橋上駅舎を昇り降りして、南口から新幹線コンコースへ抜けた。リレーつばめは当然入線しており、自分の乗った車両には5〜6人いた。つばめ12号が着いて、乗り換え客がこちらに移動してくると車内はほぼ満席となった。つばめ12号及びリレーつばめ12号は毎日運転の不定期列車で、利用率が悪ければ閑散期の平日は熊本始発の有明26号になるが、この利用率を見ると有明化はなさそうである。そのうえ、熊本での入れ替えは思ったより少なく、立客は出なかった。

普通 2939M 鳥栖 >>> 佐賀
15:59 16:23

 鳥栖では2分で乗り換えればハイパーかもめ27号に間に合うが、鳥栖、佐賀間の普通列車の流動を見たかったので、普通で移動することにした。博多からの快速の接続を受けて発車、2両編成で補助椅子を使っても数人の立客が出るくらいである。神埼で1車両20人降りた以外は各駅とも5〜8人の乗降である。電車はワンマンだが、終日無人の伊賀屋以外は全てのドアを扱った。半数以上が佐賀まで乗って、佐賀から先乗り通したのは1車両10人ほどだった。

かもめ29号 2029M 佐賀 >>> 浦上
サハ885-403 16:40(37) 17:54

 佐賀から乗った白いかもめの乗車率は8割ほどだった。肥前山口での自由席からの降客は10人ほど、肥前鹿島では数人が降りハイパーかもめ32号と交換する。この辺から有明海の海岸線沿いを走る。里信号所で白いかもめ34号、湯江でさくらと交換、諫早では1両当たり10数人が降りた。諫早を出発すると島原鉄道の気動車と並走する。南島原までは本数が比較的多く、接続は考慮されていない。喜々津からの新線区間は単線のため、白いかもめ36号と交換した。

里信号所で上りかもめと交換 長崎電軌の新車3000形

長崎電軌 浦上駅前 >>> 大橋 長崎電軌 大橋 >>> 長崎駅前
363 18:00 18:06 3001C 18:06 18:18

長崎電軌 長崎駅前 >>> 浦上車庫前 長崎電軌 浦上車庫前 >>> 長崎駅前
301B 18:37 18:52 1301A 19:24 19:39

 かもめ36号を浦上で降り、路面電車の停留所へと向かう。今月導入されたばかりの低床式電車に乗るためである。赤迫から来る低床式電車の大橋通過時間は18時8分頃だと知っていたので、大橋へ向かった。赤迫行電車で大橋に着こうとした時、正面に低床式電車が向かってきた。定刻より早く運行していたのである。慌てて100円を運賃箱に入れて、逆方向の停留所でドア扱いしている低床式電車に駆け込んだ。大橋での乗降客がいない、または両方向のホームを結んでいるのが歩道橋だとしたら、確実に低床式電車に乗れなかったと思う。

 長崎の低床式電車は、岡山MOMOと同じ連接タイプである。車内はロングシートが基本だが、運転台の後ろは向かい合わせのクロス、運転台横の出口の後部は1人掛のクロスとなっている。名物の皿うどんが食べられる店を車内から探すが、中々見つからない。さらには運転台後ろの出口に人が溜まって、降りるのに躊躇してしまった。結局、ほとんどの人が降りる長崎駅前で降りた。長崎電軌は100円均一のため精算の必要が少なく、降時間は短い。

 長崎駅前の中華料理店で皿うどんをかきこみ、JR九州のスーパー銭湯「極楽湯」へ向かう。長崎駅前を120pで発車、銭座町辺りがピークで140pぐらいとなった。その後は降りる人が多く、特に松山町では120pから100pへと下がった。ひと風呂浴びた後、再度長崎駅へ向かい、今晩の寝どころ、あかつきのレガートシートへと急ぐ。

あかつき 34レ 長崎 >>> 岡山
オハ14-302 19:47 5:08

 あかつきのレガートシートは博多寄に連結しているため、長崎駅の改札口からは最も遠い。荷物を置いた後、まもなく汽笛を鳴らしてゆっくりと動き出した。レガートシートは31席あり、そのうち11席は女性専用車である。シートはもちろんリクライニングができ、ほぼ寝ている姿勢まで調節できる。スピーカーサ−ビスがあるもののヘッドホンはなく、自前のものを使うしかなかった。

 おやすみ放送は21時30分頃佐賀発車後にかかった。レガートシートの客は長崎からずっと2人だったが、鳥栖で3人、博多で14人加わった。博多駅ホームの乗車位置案内板には寝台特急を表示できないせいか、列車が停まると走って移動する人も見られた。列車は門司で電気機関車を切り替えている間に消灯、その直後に機関車連結の衝撃を食らう。下関を発車すると眠ってしまったが、広島や福山のホームの灯りで少し目を覚ました。倉敷を発車すると体を起こし、その直後タイミングよく車掌さんが声をかけてくれた。早朝5時過ぎ、まだ暗い岡山駅のホームに一人降りた。